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技術レポート ~材質不明品への硬質クロムめっき150μm~

硬質クロムめっき被膜150μmご要望でのご依頼をいただきました!

当社実績では過去、
非量産・量産とも鉄材への硬質クロムめっき厚付けの実績はありましたが、
今回ご依頼いただいた被めっき物(支給材料)はお客様側でも材質が不明との内容でした。

材質が不明、また表面に何かしらの化成被膜または塗装がされている、
ご要望の膜厚が大きいことから他めっきメーカー様ではお断りされ、
当社へお問い合わせいただいたとのことで、
何とかお力になれないかと考えた結果、NGとなる可能性を前提であることを予めご承諾いただいた上で処理することになりました。

まずめっき処理をする前の課題として
①支給材料に施されている不明な表面処理除去
が必要となります。

除去方法として様々な方法がありますが、
まずは薬品浸漬による科学的除去を行ってみました。



上層の灰色が塗装または化成被膜、
その下に何と目視で確認できるほど厚い亜鉛めっきが施されていました。
※鋼鉄色の箇所が素地です

今回使用した薬品は酸性なので本来であれば亜鉛めっき被膜を剥離することができるのですが、
今回は上層に被膜があったことで亜鉛めっきのコーティングの役割を果たし科学的除去では排除できませんでした。

そこでワイヤーバフで隅々まで磨き、
目視で確認しながら上層の被膜を除去し、
再度薬品浸漬による亜鉛めっき被膜の剥離を試みました。

通常10~20μm程度の亜鉛めっきは長くても5分浸漬すると完全に剥離できるのですが、
今回は何と40分も剥離時の溶解反応が続くほどの膜厚でした。
※余談ですが当社も14年ほど前まで亜鉛めっきを行っていたので凡そのノウハウはあります

めっき処理前の課題はクリアできたので
②材質不明品への硬質クロムめっき150μm
へ取り組みます。

簡易な成分分析は弊社でも行えるのでX線による解析を行った結果、
鉄が主成分となっている材料ということはわかりました。

過去実績から鉄素地であれば基本的に硬質クロムめっき被膜は生成できます。
今回は数個のみでしたので当社既存の汎用治具を使用し、
試作・単品用めっき槽で処理を開始しました。

150μmともなると当社使用の蛍光X線膜厚測定器では測定ができなくなるため、
素地の測定個所を事前に決めマイクロメータで測定した後、
めっき処理中で生成された膜厚を確認しながら都度電気量と時間を計算し直し処理を進めていきます。







結果、硬質クロムめっき150μmの膜厚蒸着が完了しました!

やはり電気めっきである以上、ここまで厚い皮膜を生成すると花咲きが発生しますが、
前磨きと都度めっきの状態を確認しながらの処理を行ったことでワイヤーバフで軽く磨く程度で除去できました。

今回は材質も、また支給材料に施されている表面処理も不明とのことで確実に処理を行える保証がないことをお客様にご承諾いただいた上で受け入れをしましたが、
同様のご依頼も時折お問い合わせいただくことがあります。

㈱遠州クロムとしては可能な限りお客様の困りごとに真摯にご対応できるよう日々技術を磨き、
まずはやってみる!という信念のもと仕事に取り組んでおります。

他のめっきメーカー様からお断りされた案件や、
品質に問題がある、現在の工程を見直す代替案にめっきを使用したい、
使用しているうちに摩耗や変形が起きてしまう治具を長持ちさせたい等、
様々な理由でめっきをお求めになられるお客様を歓迎しております。

硬質クロムめっき・無電解ニッケルめっきでお困りの際は是非一度、
㈱遠州クロムまでお問い合わせください!


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