めっきの知識

ウッド浴とワット浴
ウッド浴とワット浴
ニッケルめっきは、耐食性や装飾性の向上を目的として、さまざまな製品に利用されています。
その中でも「ウッド浴」と「ワット浴」は、ニッケルめっきの代表的な浴処方として知られていますが、
それぞれ使用目的や性質が異なるため、用途に応じた適切な選定が重要です。
■ ウッド浴(Wood’s Nickel Strike)
ウッド浴は、ステンレス鋼等、
表面に不動態皮膜を持つ素材に対して用いられるストライク浴です。
塩化ニッケルと塩酸を主成分とし、pHが非常に低いため、
基材表面を化学的に活性化しながらニッケルを薄く析出させることができます。
この浴は、密着性を高めることを目的としており、
本めっきの前処理として用いることで、被膜剥離のリスクを低減し、
信頼性の高いめっきを実現します。
【代表的な浴組成】
塩化ニッケルと塩酸を主成分とし、pHが非常に低いため、
基材表面を化学的に活性化しながらニッケルを薄く析出させることができます。
この浴は、密着性を高めることを目的としており、
本めっきの前処理として用いることで、被膜剥離のリスクを低減し、
信頼性の高いめっきを実現します。
【代表的な浴組成】
成分 | 濃度 |
塩化ニッケル | 約240 g/L |
塩酸 | 約125 mL/L |
pH | 1.5以下 |
処理温度 | 常温 |
電流密度 | 5~10 A/dm² |
■ ワット浴(Watts Nickel Bath)
ワット浴は、最も一般的な電気ニッケルめっき浴であり、
硫酸ニッケル・塩化ニッケル・ホウ酸を主成分とする中性〜弱酸性の浴です。
添加剤の組み合わせにより光沢ニッケルや半光沢ニッケルなど、
用途に応じた膜質の調整が可能です。
密着性や見た目の美しさを求められる装飾用途から、
導電性や耐摩耗性を活かした機能めっきまで、幅広い分野で利用されています。
なお、ステンレス鋼対しては、ウッド浴によるストライク処理を施したうえで本浴処理を行うことで、
密着性を向上させることが推奨されます。
【代表的なワット浴の浴組成】
添加剤の組み合わせにより光沢ニッケルや半光沢ニッケルなど、
用途に応じた膜質の調整が可能です。
密着性や見た目の美しさを求められる装飾用途から、
導電性や耐摩耗性を活かした機能めっきまで、幅広い分野で利用されています。
なお、ステンレス鋼対しては、ウッド浴によるストライク処理を施したうえで本浴処理を行うことで、
密着性を向上させることが推奨されます。
【代表的なワット浴の浴組成】
成分 | 濃度(目安) |
硫酸ニッケル | 240~300 g/L |
塩化ニッケル | 30~60 g/L |
ホウ酸 | 30~45 g/L |
pH | 約4.0~4.5 |
浴温 | 50~60℃ |
電流密度 | 2~6 A/dm² |
■ 両者の比較
項目 | ウッド浴 | ワット浴 |
用途 | ストライク処理(前処理) | 本めっき処理 |
めっき方式 | 電解(活性化目的) | 電解(膜形成) |
主成分 | 塩化ニッケル+塩酸 | 硫酸ニッケル+塩化ニッケル+ホウ酸 |
pH | 約1.5以下(強酸性) | 約4〜5(中性〜弱酸性) |
浴温 | 常温 | 50〜60℃程度 |
膜質 | 薄膜(数μm以下) | 均一で調整可能 |
適用対象 | ステンレス | 鉄・銅・ストライク処理済のステンレス等 |
■ まとめ
ウッド浴とワット浴は、ニッケルめっきにおいて補完的な関係にあります。
特にステンレスのような不動態皮膜を持つ金属への処理では、
ウッド浴によるストライク処理を施したうえでワット浴を行うことで、
優れた密着性と美しい仕上がりを両立させることが可能です。
遠州クロムでは、素材や目的に応じた最適な浴条件を設計し、
めっき品質の安定化と高信頼性の確保をお手伝いしております。
特殊材への密着性にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
特にステンレスのような不動態皮膜を持つ金属への処理では、
ウッド浴によるストライク処理を施したうえでワット浴を行うことで、
優れた密着性と美しい仕上がりを両立させることが可能です。
遠州クロムでは、素材や目的に応じた最適な浴条件を設計し、
めっき品質の安定化と高信頼性の確保をお手伝いしております。
特殊材への密着性にお悩みの際は、ぜひご相談ください。