鋳物への無電解ニッケルめっき処理時の注意点

鋳物への無電解ニッケルめっき処理時の注意点

基本的には鋳物(FC・FCD)へ無電解ニッケルめっき処理を施すことは可能ですが、
一般的に鋳物は無電解ニッケルめっき処理において難材とされています。

その原因とされているのが
①素材表面の酸化被膜
②鋳巣(巣穴)
③黒鉛 です。

①素材表面の酸化被膜に関しては鋳物に限らず、
また無電解ニッケルめっきのみならずめっき処理を行う上では除去しなければなりません。
前処理条件等で対処することが可能な場合が大半です。

②鋳巣(巣穴)に関してはアルミ材にも同様のことが言えますが、
鋳巣に入り込んだ防錆油、異物、汚れ等がめっき前処理工程で完全に除去できず、
めっき処理時、またはめっき後に鋳巣から析出しめっき被膜に影響を及ぼす場合、
またはめっき前処理工程の薬品が鋳巣に入り込み水洗浄で除去し切れず残留し、次工程に持ち込むことで上記と同様の不具合となります。
鋳巣に関しての不具合としてはそのような残留物による良好なめっき被膜の阻害、
残留物による腐食(錆・黒ずみ)があります。

対策として素材の鋳巣を減らす(表面の梨地処理)、
銅めっきなどの下地めっき後に無電解ニッケルめっき処理を施し鋳巣の影響を減らす、
めっき被膜を厚くし鋳巣の影響を減らす
などがあります。

③素地表面の黒鉛にはめっき被膜は析出しません。
素材とめっき液による還元作用を利用した無電解ニッケルめっきにおいてごく自然な内容です。
特に片状黒鉛鋳鉄品(FC材・ねずみ鋳鉄)よりも球状黒鉛鋳鉄品(FCD材・ダクタイル鋳鉄)はめっき処理後の黒点(黒鉛によるめっき不着箇所)がわかりやすい傾向にあると感じます。

当社でもFCD材への無電解ニッケルめっきを行った実績がありますが、
その際は外観上では特に問題は検出されませんでした。
その理由としてめっき膜厚が厚いことにありました。

上記のとおり、黒鉛上にはめっき被膜は生成されません。
但し、その黒鉛を囲う素地には無電解ニッケルめっき被膜が析出するため、
被膜が厚くなるにつれて黒鉛を覆うようになります。

 イメージとしては無電解ニッケルめっき被膜で黒鉛を覆い隠す形になります。
しかし、当然のことながら素材表面の黒鉛1つあたりの表面積の大きさによって覆い隠すのに必要な被膜が変わってくるため、
一概に何μm以上の膜厚であれば問題がない、とは言えません。

安価で大量生産が可能な技術として重宝される鋳造ですが、
無電解ニッケルめっき処理においては難を要する材質です。

鋳物へ無電解ニッケルめっきを施す場合、
以上の内容を含めご検討いただく必要があります。